金融・M&A 実務用語集
日々の案件で扱う用語を、日英対照と会社法・会計基準の根拠とともに整理しています。定義そのものではなく、CFO・経営者視点での実務論点に比重を置く編集方針です。随時拡張。
M&A アドバイザリー
- 30%ルール(公開買付規制) 30% Rule (Mandatory Tender Offer Threshold)
令和 6 年金商法改正(2026 年 5 月 1 日施行)で、公開買付(TOB)を強制する閾値が「3 分の 1 超」から「30% 超」に引き下げられた新ルール。従来は対象外だった市場内取引(立会内)も適用対象に取り込まれ、50% 超特例・急速買付け規制の廃止など適用除外も再編された。
- DCF法 Discounted Cash Flow Method
将来のフリーキャッシュフローを加重平均資本コスト(WACC)で現在価値に割り引いて企業価値を算定する、最も広く用いられるインカムアプローチ。
- EBITDA Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization
利払前・税引前・減価償却前利益。設備投資の影響や税制・資本構成の違いを除いた、事業本体の稼得能力を示す利益指標。M&A バリュエーションでマルチプル(EV/EBITDA)の分母として最も頻繁に使われる。
- EV/EBITDA倍率 EV/EBITDA Multiple
企業価値(EV)を EBITDA で割った、事業の稼ぎ何年分の値札がついているかを示すマルチプル。資本構成・償却方針の差を吸収でき、M&A・LBO の共通言語。分子 EV も分母 EBITDA も利払い前で帰属先が揃うのが強み。
- EVブリッジ(EVから株式価値への調整) Enterprise Value Bridge
企業価値(EV)と株式価値(Equity Value)の間を、純有利子負債・非支配株主持分・優先株・非事業資産といった項目で橋渡しする調整プロセス。DCF やマルチプルで得た EV を株主の取り分に落とす際、ここを誤ると評価全体が狂う。
- FA(フィナンシャルアドバイザー) Financial Advisor
M&A取引において売り手または買い手の片側に立ち、戦略立案・バリュエーション・交渉支援・DD・契約実行まで一貫して助言する専門家。仲介(両側代理)とは利益相反の立場が本質的に異なる。
- FCFE(株主フリー・キャッシュフロー) Free Cash Flow to Equity
支払利息(税引後)と元本返済を控除し、新規借入を足し戻した、株主だけに帰属するフリー・キャッシュフロー。株主価値を直接算定する際の分子で、割引率は株主資本コスト(CoE)。Equity IRR の計算にも使う。
- FCFF(企業フリー・キャッシュフロー) Free Cash Flow to Firm
支払利息を控除する前の、債権者と株主の双方に分配可能なフリー・キャッシュフロー。無借金だったら事業が生む現金に相当し、DCF で企業価値(EV)を算定する際の分子として使う。割引率は WACC。
- MOM(Majority of Minority)条件 Majority of Minority Condition
MBOや支配株主による買収の成立条件として、買収者と利害を共通にしない一般株主が保有する株式の過半数の賛同を得ることをあらかじめ求める公正性担保措置。構造的な利益相反の下で少数株主の意思を直接反映させる。
- NOPAT/NOPLAT(税引後営業利益) Net Operating Profit After Tax / Less Adjusted Taxes
営業利益(EBIT)に、資本構成の影響を除いたみなし税を課した後の税引後営業利益。負債の税シールドを含まず企業全体に帰属する利益で、ROIC の分子・FCFF の出発点になる。NOPLAT はほぼ同義。
- PER(株価収益率) Price Earnings Ratio
株式時価総額を当期純利益で割った、株主利益の何倍の値段がついているかを示すマルチプル。株主目線で直感的だがレバレッジと一時損益で歪むため、資本構成が異なる会社の比較では EV/EBITDA を優先する。
- WACC(加重平均資本コスト) Weighted Average Cost of Capital
負債コストと株主資本コストを、それぞれの資本構成比で加重平均した割引率。DCF 法における企業価値算定の中核パラメータで、前提の 1% 変動が評価額の 10〜20% 変動を招くことも珍しくない。
- エクイティ・ロールオーバー Equity Rollover
創業者・経営陣が売却代金の一部を現金化せず、買収の受け皿会社(NewCo/SPC)に再投資して株主として残る仕組み。次のEXITで再度換金する second bite を狙うが、日本では個人のロール分は原則ロール時点で約20.315%課税される点が米国モデルとの決定的な違い。
- クロージング Closing
M&A 契約の最終履行日。株式・資産の譲渡と対価の支払を同時履行し、取引を法的に完結させる。サイン(契約締結)からクロージングまでの期間は「サイン・トゥ・クローズ」と呼ばれる。
- スクイーズアウト(株式等売渡請求・株式併合) Squeeze-out
公開買付(TOB)後に残った少数株主を現金で締め出し、対象会社を100%子会社化・上場廃止する二段階買収の第2ステップ。TOBで90%以上取れたかで、株式等売渡請求(≥90%)と株式併合(2/3〜90%未満)を機械的に使い分ける。
- ターミナルバリュー Terminal Value
DCF 法で、予測期間の終了後に事業が永続的に生み出すキャッシュフローの現在価値。DCF における企業価値の大部分(多くの場合 60〜80%)を占めるため、前提の置き方がバリュエーションを大きく左右する。
- デューデリジェンス Due Diligence (DD)
M&A において買い手が対象会社の実態を調査する一連の手続。財務・税務・法務・ビジネス・人事・IT・環境など領域ごとに実施し、買収価格の調整と契約上のリスク配分の基礎になる。
- のれん Goodwill
M&A で取得原価が被取得会社の識別可能純資産の公正価値を超過した部分。日本基準では 20 年以内の均等償却、IFRS では非償却・減損テストと処理が大きく異なる。大型 M&A 後の会計・経営管理で中心的論点。
- フリー・キャッシュフロー Free Cash Flow
事業から生み出された現金のうち、債権者・株主に自由に分配可能な部分。DCF の分子として使われ、事業の本源的な価値創造能力を測る指標。FCFF(企業全体)と FCFE(株主帰属)の 2 種類がある。
- ブレークアップフィー Break-up Fee
M&A 契約の成立後、一定の事由(対抗買収提案の受諾等)で取引が不成立となった場合に、一方当事者が他方に支払う違約金的性格の金員。日本実務ではまだ限定的だが、クロスボーダー案件・上場企業案件では増加傾向。
- マルチプル法(類似上場企業比較法) Comparable Company Analysis
類似上場企業の株価や取引事例の財務指標倍率を対象企業に適用して企業価値を算定する、マーケットアプローチの中核手法。EV/EBITDA と PER が最も頻用される。
- 永久成長率(Terminal Growth Rate) Terminal / Perpetual Growth Rate
DCF のターミナルバリューで、予測期間経過後に事業が永続的に成長する率 g。日本実務では機械的に 0% と置く慣行が根強いが、成長の質(RONIC)を明示する価値ドライバー公式で見ると、この置き方が競争優位企業を過小評価しうる点が論点。
- 株式価値算定 Equity Valuation
企業価値(EV)から有利子負債を控除し、非事業資産を加算して株主価値(Equity Value)を算定する行為。プレ IPO のラウンド、譲渡制限株式の売買価格決定、相続税評価などで用いられる。
- 企業価値評価 Business Valuation
企業全体(事業価値+非事業資産)の経済的価値を算定する行為。インカム・マーケット・コストの3アプローチで構成され、M&A・資本政策・減損・公正な価格決定など多目的に用いられる。
- 基本合意書(LOI) Letter of Intent
M&A 取引における初期の合意文書。対価・スキーム・スケジュール・独占交渉権などの主要項目について当事者の意向を文書化する。法的拘束力の有無が項目ごとに異なるため、記載の区分けが重要。
- 共同保有者 Joint Holder
複数の株主が「一緒に動く関係」にあると認定された場合、それぞれの保有を合算して大量保有報告義務を判定する制度。単独では 5% 未満でも、関係者と合算して 5% を超えれば報告義務が発生する。
- 公開買付(TOB) Tender Offer Bid (TOB)
上場会社の株式を、市場外で不特定多数の株主から一定価格・一定期間・一定数量買い付ける方法。令和 6 年改正(2026 年 5 月 1 日施行)により、市場内外を問わず 30% 超を取得する場合に TOB が義務化される(旧・3 分の 1 ルールから引下げ)。敵対的買収・MBO・第三者割当の主要手段。
- 持分法 Equity Method
関連会社(議決権の 20% 以上 50% 以下保有、または重要な影響力を行使しうる投資先)に対する投資の会計処理方法。投資先の純利益・純資産の変動を投資勘定に反映する。連結と単体の中間的位置づけ。
- 重要提案行為等 Important Proposal Conduct
大量保有報告書において保有者の働きかけが「重要度が高い」と認定される行為類型。役員選任・組織再編・資本政策・定款変更等が該当。「重要提案行為あり」と申告すると機関投資家の特例報告制度が使えなくなる等の規制上の制約が発生する。
- 正味運転資本 Net Working Capital
事業運営に必要な運転資本(売掛金・棚卸資産・買掛金の差額)。日常の資金繰りを決定するだけでなく、M&A における価格調整(Working Capital Adjustment)や DCF でのフリー・キャッシュフロー計算で中心的役割を果たす。
- 大量保有報告制度 Large Shareholding Reporting System (5% Rule)
上場会社の株式を 5% 超保有する者に EDINET 経由での開示を義務づける、いわゆる「5% ルール」。保有目的・共同保有者・重要提案行為等の情報により、上場会社の株主構成と株主の意図の透明性を確保する制度。
- 特別委員会(M&Aにおける独立委員会) Special Committee
MBOや支配株主による買収など構造的な利益相反を伴うM&Aで、独立社外取締役を中心に組成し、取引条件の妥当性と手続の公正性を検討する委員会。経産省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019)が筆頭に挙げる公正性担保措置。
- 買収防衛策 Takeover Defense (Poison Pill / Rights Plan)
敵対的買収を受けた場合に、新株予約権の発行等を通じて買収者の持株比率を希薄化させる装置。代表例が事前警告型ライツプラン。2022 年以降の日本では機関投資家圧力・東証ガバナンス基準により導入企業数は半減傾向。
- 表明保証 Representations and Warranties
M&A 契約で売り手が買い手に対し、対象会社に関する一定事実の真実性・正確性を表明し保証する条項。違反があった場合、買い手に対する補償義務の根拠となる。
資本政策
- ROIC(投下資本利益率) Return on Invested Capital
税引後営業利益(NOPAT)を投下資本で割った、事業が投じた資本からどれだけ稼いだかを示す指標。ROIC が WACC を上回って初めて価値が創造される。分子は簿価ベース、比較対象の WACC は時価ベースという「ねじれ」が設計上の論点。
- スチュワードシップ・コード Stewardship Code
機関投資家が投資先企業との建設的対話を通じて中長期的な企業価値向上に資することを求める原則集。2014 年に金融庁が制定し、2017・2020・2025 年に改訂。コーポレートガバナンス・コードと対をなす「ツイン・コード」体制を形成する。
- ストックオプション Stock Option
新株予約権のうち、役職員への報酬・インセンティブとして付与されるもの。税制適格・税制非適格・信託型の類型があり、税務処理と会計処理が大きく異なる。IPO を目指すスタートアップの人材確保で中心的役割を果たす。
- ダウンラウンド Down Round
次回の資金調達ラウンドが、前回ラウンドよりも低い企業評価額(Pre-money Valuation)で実施されること。希薄化防止条項が発動し、既存優先株主の持分が調整される。スタートアップ経営の重要な再設計局面。
- バリュエーションキャップ Valuation Cap
J-KISS や SAFE 等のコンバーティブル投資において、次回ラウンドでの株式転換時に適用される評価額の上限。投資家の実質的な取得単価の下限を保証する機能を持つ。
- 株式価値算定 Equity Valuation
企業価値(EV)から有利子負債を控除し、非事業資産を加算して株主価値(Equity Value)を算定する行為。プレ IPO のラウンド、譲渡制限株式の売買価格決定、相続税評価などで用いられる。
- 企業価値評価 Business Valuation
企業全体(事業価値+非事業資産)の経済的価値を算定する行為。インカム・マーケット・コストの3アプローチで構成され、M&A・資本政策・減損・公正な価格決定など多目的に用いられる。
- 希薄化防止条項 Anti-dilution Provision
優先株主が保有する株式の発行後に、より低い価額で新株が発行された場合(ダウンラウンド)、既存優先株主の持分が希薄化しないよう、転換比率を調整する条項。
- 共同保有者 Joint Holder
複数の株主が「一緒に動く関係」にあると認定された場合、それぞれの保有を合算して大量保有報告義務を判定する制度。単独では 5% 未満でも、関係者と合算して 5% を超えれば報告義務が発生する。
- 資本政策 Capital Strategy
企業が資金調達・配当・自己株買い・組織再編・承継に伴う株式整理など、資本の調達と配分を中長期で設計する経営機能。IPO 前はエクイティストーリー、IPO 後は資本効率と株主還元の設計が中心。
- 種類株式 Class Shares
普通株式と異なる権利内容を持つ株式。会社法第108条が定める 9 種類(配当優先、残余財産分配優先、議決権制限、譲渡制限、取得請求権付、取得条項付、全部取得条項付、拒否権付、役員選任権付)の組合せで設計する。スタートアップの優先株、事業承継の無議決権株、買収防衛の拒否権付株など用途は多彩。
- 重要提案行為等 Important Proposal Conduct
大量保有報告書において保有者の働きかけが「重要度が高い」と認定される行為類型。役員選任・組織再編・資本政策・定款変更等が該当。「重要提案行為あり」と申告すると機関投資家の特例報告制度が使えなくなる等の規制上の制約が発生する。
- 大量保有報告制度 Large Shareholding Reporting System (5% Rule)
上場会社の株式を 5% 超保有する者に EDINET 経由での開示を義務づける、いわゆる「5% ルール」。保有目的・共同保有者・重要提案行為等の情報により、上場会社の株主構成と株主の意図の透明性を確保する制度。
- 第三者割当増資 Third-Party Allotment
既存株主以外の特定の第三者に新株を発行する資金調達手法。スタートアップの VC ラウンド、上場企業の資本業務提携、経営再建時の資金支援などで用いられる。有利発行規制と上場企業の開示ルールが論点。
- 買収防衛策 Takeover Defense (Poison Pill / Rights Plan)
敵対的買収を受けた場合に、新株予約権の発行等を通じて買収者の持株比率を希薄化させる装置。代表例が事前警告型ライツプラン。2022 年以降の日本では機関投資家圧力・東証ガバナンス基準により導入企業数は半減傾向。
- 優先株式 Preferred Stock
普通株式に対して、残余財産分配・配当・議決権等で優先的権利を持つ種類株式。スタートアップの VC ラウンドで標準的に用いられる。清算優先・参加型/非参加型・転換権・希薄化防止の組合せで経済効果が大きく変わる。
CFO 伴走
- DCF法 Discounted Cash Flow Method
将来のフリーキャッシュフローを加重平均資本コスト(WACC)で現在価値に割り引いて企業価値を算定する、最も広く用いられるインカムアプローチ。
- EBITDA Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization
利払前・税引前・減価償却前利益。設備投資の影響や税制・資本構成の違いを除いた、事業本体の稼得能力を示す利益指標。M&A バリュエーションでマルチプル(EV/EBITDA)の分母として最も頻繁に使われる。
- EV/EBITDA倍率 EV/EBITDA Multiple
企業価値(EV)を EBITDA で割った、事業の稼ぎ何年分の値札がついているかを示すマルチプル。資本構成・償却方針の差を吸収でき、M&A・LBO の共通言語。分子 EV も分母 EBITDA も利払い前で帰属先が揃うのが強み。
- EVブリッジ(EVから株式価値への調整) Enterprise Value Bridge
企業価値(EV)と株式価値(Equity Value)の間を、純有利子負債・非支配株主持分・優先株・非事業資産といった項目で橋渡しする調整プロセス。DCF やマルチプルで得た EV を株主の取り分に落とす際、ここを誤ると評価全体が狂う。
- FCFE(株主フリー・キャッシュフロー) Free Cash Flow to Equity
支払利息(税引後)と元本返済を控除し、新規借入を足し戻した、株主だけに帰属するフリー・キャッシュフロー。株主価値を直接算定する際の分子で、割引率は株主資本コスト(CoE)。Equity IRR の計算にも使う。
- FCFF(企業フリー・キャッシュフロー) Free Cash Flow to Firm
支払利息を控除する前の、債権者と株主の双方に分配可能なフリー・キャッシュフロー。無借金だったら事業が生む現金に相当し、DCF で企業価値(EV)を算定する際の分子として使う。割引率は WACC。
- NOPAT/NOPLAT(税引後営業利益) Net Operating Profit After Tax / Less Adjusted Taxes
営業利益(EBIT)に、資本構成の影響を除いたみなし税を課した後の税引後営業利益。負債の税シールドを含まず企業全体に帰属する利益で、ROIC の分子・FCFF の出発点になる。NOPLAT はほぼ同義。
- PER(株価収益率) Price Earnings Ratio
株式時価総額を当期純利益で割った、株主利益の何倍の値段がついているかを示すマルチプル。株主目線で直感的だがレバレッジと一時損益で歪むため、資本構成が異なる会社の比較では EV/EBITDA を優先する。
- ROIC(投下資本利益率) Return on Invested Capital
税引後営業利益(NOPAT)を投下資本で割った、事業が投じた資本からどれだけ稼いだかを示す指標。ROIC が WACC を上回って初めて価値が創造される。分子は簿価ベース、比較対象の WACC は時価ベースという「ねじれ」が設計上の論点。
- WACC(加重平均資本コスト) Weighted Average Cost of Capital
負債コストと株主資本コストを、それぞれの資本構成比で加重平均した割引率。DCF 法における企業価値算定の中核パラメータで、前提の 1% 変動が評価額の 10〜20% 変動を招くことも珍しくない。
- キャッシュコンバージョンサイクル Cash Conversion Cycle (CCC)
原材料を仕入れてから売掛金を現金回収するまでの日数を示す運転資本効率の指標。DSO + DIO − DPO で算定し、負の値になる企業は取引先の資金で運転資本を賄っていることを意味する。
- キャッシュランウェイ Cash Runway
現在の手元現金で、営業キャッシュフローの赤字を何ヶ月間吸収できるかを表す指標。スタートアップ・成長フェーズの企業で、次回資金調達までの生存可能期間を示す。Burn Rate とセットで管理する。
- スチュワードシップ・コード Stewardship Code
機関投資家が投資先企業との建設的対話を通じて中長期的な企業価値向上に資することを求める原則集。2014 年に金融庁が制定し、2017・2020・2025 年に改訂。コーポレートガバナンス・コードと対をなす「ツイン・コード」体制を形成する。
- ストックオプション Stock Option
新株予約権のうち、役職員への報酬・インセンティブとして付与されるもの。税制適格・税制非適格・信託型の類型があり、税務処理と会計処理が大きく異なる。IPO を目指すスタートアップの人材確保で中心的役割を果たす。
- ターミナルバリュー Terminal Value
DCF 法で、予測期間の終了後に事業が永続的に生み出すキャッシュフローの現在価値。DCF における企業価値の大部分(多くの場合 60〜80%)を占めるため、前提の置き方がバリュエーションを大きく左右する。
- のれん Goodwill
M&A で取得原価が被取得会社の識別可能純資産の公正価値を超過した部分。日本基準では 20 年以内の均等償却、IFRS では非償却・減損テストと処理が大きく異なる。大型 M&A 後の会計・経営管理で中心的論点。
- フリー・キャッシュフロー Free Cash Flow
事業から生み出された現金のうち、債権者・株主に自由に分配可能な部分。DCF の分子として使われ、事業の本源的な価値創造能力を測る指標。FCFF(企業全体)と FCFE(株主帰属)の 2 種類がある。
- マルチプル法(類似上場企業比較法) Comparable Company Analysis
類似上場企業の株価や取引事例の財務指標倍率を対象企業に適用して企業価値を算定する、マーケットアプローチの中核手法。EV/EBITDA と PER が最も頻用される。
- 永久成長率(Terminal Growth Rate) Terminal / Perpetual Growth Rate
DCF のターミナルバリューで、予測期間経過後に事業が永続的に成長する率 g。日本実務では機械的に 0% と置く慣行が根強いが、成長の質(RONIC)を明示する価値ドライバー公式で見ると、この置き方が競争優位企業を過小評価しうる点が論点。
- 企業価値評価 Business Valuation
企業全体(事業価値+非事業資産)の経済的価値を算定する行為。インカム・マーケット・コストの3アプローチで構成され、M&A・資本政策・減損・公正な価格決定など多目的に用いられる。
- 希薄化防止条項 Anti-dilution Provision
優先株主が保有する株式の発行後に、より低い価額で新株が発行された場合(ダウンラウンド)、既存優先株主の持分が希薄化しないよう、転換比率を調整する条項。
- 財務制限条項 Financial Covenants
融資契約・社債発行契約で、借り手の財務状態を一定水準に保つことを求める条項。自己資本比率・純資産額・DSCR・レバレッジレシオ等が典型。抵触すると期限の利益喪失や金利引上げのトリガーとなる。
- 持分法 Equity Method
関連会社(議決権の 20% 以上 50% 以下保有、または重要な影響力を行使しうる投資先)に対する投資の会計処理方法。投資先の純利益・純資産の変動を投資勘定に反映する。連結と単体の中間的位置づけ。
- 正味運転資本 Net Working Capital
事業運営に必要な運転資本(売掛金・棚卸資産・買掛金の差額)。日常の資金繰りを決定するだけでなく、M&A における価格調整(Working Capital Adjustment)や DCF でのフリー・キャッシュフロー計算で中心的役割を果たす。