← Glossary
M&A Advisory
エクイティ・ロールオーバー
Equity Rollover
読み: えくいてぃろーるおーばー
定義
エクイティ・ロールオーバー(Equity Rollover)は、創業者・経営陣が保有株式の売却代金の一部を現金化せず、買収目的会社(NewCo/SPC)に再投資し、スポンサー(PE ファンド等)と並ぶ少数株主として残る仕組み。非公開化(take-private)や MBO で、経営陣を EXIT まで一体化させるインセンティブ設計の中核になる。
- 典型的なロール比率:売却代金の概ね 10〜30%、モードは 20% 前後(米国の実務目安)
- Second bite of the apple(2回目のかじり):ロールした持分が次のスポンサー EXIT(通常 3〜5 年後)で再度換金される追加リターン
数値例(優先ウォーターフォール捨象の算術例)
企業価値 100 のうち 20(20%)を NewCo にロールし、80 を現金化。スポンサーが 5 年後に 2.5 倍で EXIT すると、ロール分は 20 × 2.5 = 50 ―― 当初現金化した 80 に加わる second bite。実額は優先株の清算優先権・希薄化・後述の税を差し引く必要があり、これは方向感を掴むための算術例。
日本の課税ポイント(米国モデルをそのまま輸入しない)
米国では IRC §351/§721 により、株式のみを対価とする NewCo への拠出は譲渡損益の課税繰延が可能。この繰延を暗黙の前提にすると second bite が魅力的に見える。
しかし日本の個人創業者は原則、ロール時点で課税される。 上場株式の譲渡益は申告分離課税で約 20.315%(所得税 15% + 復興特別所得税 0.315% + 住民税 5%)。個人の現物出資は組織再編税制上「適格」になり得ず、再投資分を拠出扱いにしても時価譲渡と見なされるリスクがあるため、多くのスキームで経済的にはその場で課税される。したがってピッチでは税引後の手取りベースで second bite を試算しないと過大約束になる。具体的なスキーム設計は税務専門家の確認が前提(詳細は当社インサイトで解説)。
実務上の論点
- 名目の持株%で評価しない。厚い優先株(清算優先権付き)の後ろに積まれた「大きな普通株%」は、薄い優先株の「小さな%」より価値が低いことがある。ロールはクラスと liquidation preference で見る
- ロール持分は MIP/sweet equity と併せ、利益相反の源泉にもなるため、特別委員会等の手続保護とセットで設計する