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M&A Advisory

30%ルール(公開買付規制)

30% Rule (Mandatory Tender Offer Threshold)

読み: さんじゅっぱーせんとるーる

定義

「30%ルール」は、令和 6 年金融商品取引法等改正法(2024 年 5 月 22 日公布、2026 年 5 月 1 日施行)により、従来の「3 分の 1 ルール」に代わって導入された、公開買付(TOB) を強制する新しい閾値基準。買付け等の後の 株券等所有割合が 30% を超える 場合、原則として市場内外を問わず公開買付けによらなければならない(改正法第 27 条の 2 第 1 項第 1 号)。

改正前は、市場外取引または立会外取引(ToSTNeT 等)で 3 分の 1(約 33.3%)超を取得する場合に限り TOB が強制されていた。改正の二大変更点は、(1) 閾値を 30% に引き下げたこと、(2) 従来は適用対象外だった 市場内取引(立会内) を取り込んだことにある。30% という水準は、多くの上場会社で株主総会の特別決議を阻止でき、普通決議にも重大な影響を及ぼし得る持株比率であること、諸外国の公開買付制度でも 30% を閾値とする例が多いことを踏まえて設定された。

立会内取引が取り込まれた背景には、市場内での急速な買い上がりが、①取引の数量・価格が事後的に公表されるにすぎず事前の情報開示を欠くこと、②時間優先で約定されるため一般株主の熟慮期間が確保されないこと、③競争売買のため売却価格がまちまちとなること、が指摘されたことがある。裁判例でも、立会内取引を通じて約 3 か月で議決権の 3 分の 1 超(約 39.94%)を取得した事例につき、一般株主に投資判断の情報と時間が与えられず「強圧性」を持つと判示されていた。

旧「3 分の 1 ルール」との対比

論点旧・3 分の 1 ルール(〜2026/4/30)新・30%ルール(2026/5/1〜)
強制閾値株券等所有割合 3 分の 1(約 33.3%)超30% 超
市場内取引(立会内)適用対象外適用対象(新たに強制)
市場外・立会外(ToSTNeT)適用対象適用対象(維持)
5% ルール市場外で多数の者(60 日間に 10 名超)から 5% 超取得維持(市場外で 5% 超〜30% 以下・同項 2 号)
50% 超所有者の特例買付後 2/3 未満までの市場外買付けを TOB なしで可廃止(原則 TOB 対象)
急速な買付け等の規制3 か月で 10% 超・うち 5% 超を市場外/立会外で取得し 1/3 超 → TOB 強制廃止(大量保有報告制度による透明化で代替)
僅少な買付けの除外(規定なし)30% 超保有者が 6 か月で 0.5% 未満の取得は TOB 不要(新設)
3 分の 2 ルール(全部勧誘義務・全部買付義務)買付後 2/3 以上で全部勧誘・全部買付義務閾値 2/3 は維持。当局の承認による全部勧誘義務の免除を新設

買付者への実務的含意

  • 市場内での買い集めが封じられる:立会内取引を通じて 30% 超の議決権を静かに積み上げる戦術が使えなくなる。30% を超える取得は、公告・公開買付届出書の提出・買付期間(熟慮期間)の確保という TOB 手続きを経る必要がある
  • 既存の支配株主の買い増し:改正前は 50% 超所有者の特例(買付後 2/3 未満までの市場外買付け)を使って議決権数にあまり注意せず買い進められたが、これが廃止された。既に 30% 超を保有する者が TOB によらず買い増すには、6 か月あたり 0.5% 未満の取得(買付後 2/3 未満・多数の者からの市場外取引でない等の要件下)に抑える必要がある
  • 急速買付け規制の廃止と開示への一本化:一律の期間・数量による「急速な買付け等」の規制は削除され、代わりに 大量保有報告制度 による情報開示で取引の透明性を確保する建付けに変わった

対象会社取締役会への実務的含意

  • 強圧性への防御が制度化された:立会内での急速な買い上がりに一般株主が情報・熟慮期間を欠いたまま巻き込まれる「強圧性」の問題が、閾値引下げと立会内の取り込みで正面から緩和された。取締役会にとっては、支配権移転の局面が TOB 手続きの表舞台に乗りやすくなる
  • 有事対応の時間的余地:TOB 手続きが強制されることで、特別委員会の設置・独立 FA の起用・買収防衛策 の要否検討など、取締役会が対応を組み立てる時間を確保しやすくなる。改正では、公開買付開始後に有事導入型買収防衛策の導入が公表されたことが TOB の撤回事由に追加された点も要確認
  • 3 分の 2 ルールは維持:買付後の株券等所有割合が 2/3 以上となる場合に、対象者が発行する全ての株券等を勧誘対象とする全部勧誘義務・全部買付義務は改正後も維持される。スクイーズアウトを伴う二段階買収のスキーム設計は従来の考え方を踏襲できる。ただし当局の承認を得た場合に全部勧誘義務を免除する新ルートが設けられた

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