永久成長率(Terminal Growth Rate)
Terminal / Perpetual Growth Rate
読み: えいきゅうせいちょうりつ
定義
永久成長率(Terminal / Perpetual Growth Rate, g)は、ターミナルバリューを永久成長モデル(Gordon Growth Model)で算定する際の、予測期間経過後に事業が永続的に成長する率。
TV = FCF_(n+1) ÷(WACC − g)
g の上限や WACC − g スプレッドの感応度など、TV 算定全般の論点はターミナルバリューの項に譲り、本項は g の置き方そのもの(「機械的に 0%」批判と RONIC)に絞る。
「機械的に 0%」批判
日本の評価実務では長年、予測期間後の g を一律 0%と置き、新規投資の収益性(RONIC)が資本コスト(WACC)へ瞬時に収斂すると仮定する慣行が定着してきた。これは「継続価値の算定が驚くほど機械的なブラックボックスに陥っている」との批判を受けてきたデフレ時代の遺物であり、インフレと金利が復活したマクロ環境では名目成長率がプラスになるため、0% は過度に保守的な前提になりうる。
RONIC ―― 成長の「質」を明示する
Gordon モデルでは「成長すれば常に価値が上がる」ように見えるが、McKinsey 系の価値ドライバー公式は成長の質を明示する:
TV = NOPLAT_(n+1) ×(1 − g / RONIC)÷(WACC − g)
RONIC(Return on New Invested Capital, 新規投資資本利益率)は「新しく投じた 1 円が生む利益率」。g / RONIC が、成長 g を賄うのに必要な再投資率になる。
数値例:NOPLAT = 100、g = 1%、RONIC = 10% のとき、再投資率 = g / RONIC = 1% ÷ 10% = 10%。FCF = 100 ×(1 − 0.10) = 90。RONIC が高いほど、同じ成長をより少ない再投資で達成でき FCF が大きい。
RONIC = WACC のとき、g がいくつでも TV = NOPLAT ÷ WACC(永久年金の公式)に帰着し、成長率は企業価値に影響しない。新規投資の NPV がゼロになるためで、これが「0% と置く」慣行と実質同じ効果を持つ。
- RONIC > WACC(ブランド・ネットワーク効果・moat)なら成長が価値を創造する。ここに機械的に RONIC = WACC を当てると企業価値を過小評価する
- RONIC < WACC なら成長は価値を破壊する